奈良弁護士会
2 責任阻却事由
(1) 請求原因3(2)の善管注意義務違反
仮に控訴人Bに請求原因3(2)のとおり本件販売継続等の措置につき善
管注意義務違反があるとしても,請求原因に対する控訴人Bの認否3(2)
第二段?ないし?の各事実に加えて,Eの約1100店に及ぶE店舗の経
営混乱及び売上低下の回避の必要性,控訴人Aの長年のC社及びEにおけ
る影響力,控訴人AによるC社としての本件販売継続の判断及び決定,控
訴人Bが平成12年6月に就任したばかりの平取締役にすぎないことなど
勘案すると,控訴人Bに対し,本件販売継続につき敢えて異議を唱えてこ
れを中止させる行為に出ることを求めることは酷に過ぎ,期待可能性が乏
しいから,その責任は阻却される。
また,本件混入を公表しなかったなど
の措置についても,控訴人BがC社の20数名の取締役のうちの1年目の
平取締役であるなどの地位,発言力等のほか,控訴人Bができる限り被害
回復措置をとるようPら新役員らに対し,上申し続けていたが,無視され
ていたことや,平成13年9月以降事実上取締役とはいえなくなっていた
ことなどからすると,控訴人Bが敢えて公表等の行為に出るにつき期待可
能性は乏しいから,その責任は阻却される。
(2) 請求原因3(3)の善管注意義務違反
仮に控訴人Bに請求原因3(3)のとおり6300万円の支払につき善管
注意義務違反があるとしても,請求原因に対する控訴人Bの認否3(3)第
三段のとおり,HがFに対して損害賠償責任を負う可能性が皆無とはいえ
ないこと,HはIの系列会社であり,HとC社が独自に製造委託したFと
の間の賠償問題に関し,Hに負担をかけることは,今後のIないしHとの
取引関係に悪影響を及ぼすことが見込まれるため,Hに負担をかけないで
事態を早期に解決し,安定した取引関係を維持する必要性があったこと,
従来から業務委託におけるHの技術指導や品質管理には問題があり,その
業務内容と対価との間には不均衡が生じており,ロイヤリティの料率の低
減の必要があったこと,現にHに対する業務委託手数料率は1.6%から
1%に低減したことなどの諸事情に加え,控訴人Aの長年のC社及びEに
おける影響力,控訴人Bが平成12年6月に就任したばかりの平取締役に
すぎないことなど勘案すると,控訴人Bに対し,6300万円の支払につ
き敢えて異議を唱えてこれを中止させる行為に出ることを求めることは酷
に過ぎ,期待可能性が乏しいから,その責任は阻却される。
3 過失相殺
仮に控訴人Bに請求原因3(2)のとおり本件販売継続等の措置につき善管
注意義務違反並びに請求原因3(3)のとおり6300万円の支払につき善管
注意義務違反があるとしても,控訴人Bは,上司であった控訴人Aから指示
を受け,これをC社の会社としての正式決定事項であると認識して,忠実に
実行したものであり,他の取締役等によって,その中止を求められることも
なかったほか,遅くともC社の役員体制が一新された平成13年6月以降,
新たに経営陣となったP,Q,Rらから◎◎の問題には一切タッチしないよ
う言い渡されたものであるが,控訴人Bは,「今後,本件混入問題がFを通
じて公にされるであろう。」,「事前の会社としての対応はどうされるのか」
などと上申したのに対し,Pらの返答は,「Fとの取引は打ち切って訴訟を
提起する。
TBHQについては公になるならなったでかまわない。」という
ものであり,決して事実を公にしようという姿勢ではなく,その後,本件混
入の事実がマスコミ報道等により公になったことに端を発して,C社は請求
原因4の出費を余儀なくされることになったものであり,C社の損害が拡大
したのはPらの姿勢や判断等に原因があり,同出費はPらの行為の結果とい
うべきであるから,控訴人Bの同各善管注意義務違反行為は,C社の長年に
わたる会社としての組織系統或いは管理体制上の問題性から起因したものと
いえる。
このような場合,損害賠償制度の根本にある公平の原則ないし信義
則に照らし,過失相殺の規定が適用ないし類推適用されるべきである。